ヘルスケアデザイン株式会社

 コラム

No.12
骨太方針2020に見る、これからの医療・介護の方向性


7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針2020」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されました。今年はコロナ禍の影響を受け、例年よりも遅い発表、かつ、流動的な現状を反映したのか、かなり少ない分量となっていることが印象的です。

全般的に、ポストコロナ時代を見据えた「下支え」「維持」「継続」等の守りのキーワードの上に成り立つ「喚起」「再生」の戦略として、経済政策、国際政策、社会政策が語られています。今回は、この「骨太方針2020」の中で、医療・介護分野の将来がどう描かれているのかに注目したいと思います。

治療薬やワクチンの開発段階である現状において、経済活動の段階的引上げには、感染再拡大の防止と堅固な医療体制が引き続き強く求められます。その視点から、検査能力拡充、ワクチン開発加速・確保の重要性とともに、安定した医療の確保について、言及されています。
医療のオンライン化については、「オンライン診療について、電子処方箋、オンライン服薬指導、薬剤配送によって、診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築する。」と記載されました。

今回の感染症拡大を契機に、柔軟な医療提供体制、データ利活用、予防・健康づくりの重要性も再認識されたことから、ウィズコロナ時代の「新たな日常」の形として、地域社会やコミュニティ等において高齢者の見守り、人の交流やつながり、助け合いが充実した地域共生社会の構築に着目していることが述べられています。以下、一部を抜粋します。

「都道府県が、二次医療圏間の病床や検査能力等の把握と必要な調整を円滑に行えるようにするとともに、医療機関間での医療従事者協力等を調整できる仕組みを構築する。加えて、都道府県間を超えた病床や医療機器の利用、医療関係者の配置等を厚生労働大臣が調整する仕組みを構築する。累次の診療報酬上の特例的な対応や新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金等による対策の効果を踏まえつつ、患者が安心して医療を受けられるよう、引き続き、医療機関・薬局の経営状況等も把握し、必要な対応を検討し、実施する。また、本年の薬価調査を踏まえて行う2021年度の薬価改定については、骨太方針2018等の内容に新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、十分に検討し、決定する。」
「病院と診療所の機能分化・連携等を推進しつつ、かかりつけ機能の在り方を踏まえながら、かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の普及を進める。」
「オンライン診療等の時限的措置の効果や課題等の検証について、受診者を含めた関係者の意見を聞きエビデンスを見える化しつつ、オンライン診療や電子処方箋の発行に要するシステムの普及促進を含め、実施の際の適切なルールを検討する。電子処方箋について、既存の仕組みを効率的に活用しつつ、2022年夏を目途に運用を開始する。医師による遠隔健康相談について、既存事業の検証を行いつつ、効果的な活用を図る。」
「感染症の下、介護・障害福祉分野の人手不足に対応するとともに、対面以外の手段をできる限り活用する観点から、生産性向上に重点的に取り組む。ケアプランへのAI活用を推進するとともに、介護ロボット等の導入について、効果検証によるエビデンスを踏まえ、次期介護報酬改定で人員配置の見直しも含め後押しすることを検討する。介護予防サービス等におけるリモート活用、文書の簡素化・標準化・ICT化の取組を加速させる。医療・介護分野のデータのデジタル化と国際標準化を着実に推進する。」

コロナ感染症拡大が現在進行形である現段階での方針発表ですので、漠然とした見通しのみが示された状況ではありますが、この「骨太の方針」が要となって、今後次年度の予算が編成されていきます。今後を占う一つの資料として、お役立てください。

 ▶内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2020(概要)」

 ▶内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2020」

専務取締役 奥田 敏博

 

 


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