ヘルスケアデザイン株式会社

 コラム

No.11
職場以外でのセクシャルハラスメント


先日、とある病院の院長よりセクハラに関する相談がありました。職員から病院の親睦を図るための飲み会で、同僚からセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)被害を受けたという相談があり、このような職場外で起こったセクハラの問題にも、病院として対応しなければいけないのか、どのような対応が必要となるのか、といった内容でした。
「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下、「指針」という。)(平成28年8月2日 厚生労働省告示第314号)には、セクハラが問題とされる職場は必ずしも通常業務を行う場所だけではないことが示されています。また、裁判例では当事者だけではなく事業主に対して損害賠償命令がされるケースもあるため、病院として対応することは不可欠と考えられます。
国は、男女雇用機会均等法等によって職員が性的な言動により不利益を被ったり、就業環境が害されることを禁止しており、指針において事業主が行うべき具体的な措置を示しています。

 

論点①:職場以外での行為についても対応が必要かどうか
この指針において「職場」とは、職員が業務を遂行する場所としつつ、業務を遂行している場所であれば通常業務をしている場所以外、例えば打合せをするための飲食店、患者の自宅も職場に含まれるとしています。裁判例の大半が業務をしていない飲み会についても職場として判断しているため、職場として取り扱うことが現実的です。また、セクハラが起きてしまうと職員間の関係を悪化させ、業務に支障をきたしてしまうことから、病院内で起きたセクハラ事案と同様の対応が求められると考えられます。

 

論点②:セクハラ問題が起きた際の対応方法について
職員から被害の相談があったにも関わらず医院が適切な対応を行わないと、職場環境配慮義務違反として損害賠償を求められる可能性があります。それを防ぐためにはまず、被害を受けた職員からその内容や状況を聞く必要があります。被害を受けた職員への状況確認の後には、加害者の職員にも事情を聞くようにします。また、その場を目撃した他の職員がいれば、状況をヒアリングすることも考えられます。
事実確認の上、必要に応じて加害者の職員に懲戒処分を行うことを検討することとなります。

セクハラ問題は当事者同士の問題と考えられがちですが、管理責任として病院が損害賠償を迫られたり、都道府県労働局の専門部署から是正指導を受けることがあります。病院内でセクハラをおこさせないためには、病院長自らセクハラは絶対に許されないというメッセージを職員に周知するとともに、管理者を始め病院全体で日頃の言動から注意するように心がけるけることが重要です。また、いざ問題が発生してしまった場合に速やかに適切な対応ができるように相談窓口を設置し、対応する担当者を決めておくなどしておきましょう。

 

社会保険労務士・コンサルタント 西尾 雅夫

 

 


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