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経営管理体制から見える病院の経営の行方
病院が倒産に至るまでにはさまざまなプロセスがあります。
その予兆として、次の3つの現象があげられます。
①脆弱な財政基盤
採算性の検証なく、過大投資をして借入金の返済額が減価償却費以上となり、キャッシュフローが行き詰まる。
②黒字にならない収益構造
病床稼働率が低く、人件費等の固定費が回収できていない。
③経営管理組織の機能不全
「理事長=ルールブック」といったオーナー経営で理事会も機能していない。
上記のうち、最大の問題は③経営管理組織の機能不全あるいは不在であると考えます。経営管理組織の機能不全により、財務基盤の強化はもちろん、黒字にするための稼働率の管理や地域ニーズに合わせた機能の強化などが望めないからです。
この問題は医師が経営トップに就いている医療機関特有の問題とも言えます。もちろん医師であっても優秀な経営者はいますが、臨床と経営を両立させるのは困難であり、経営面が軽視されることになりがちです。医経分離ができているかはその病院の経営の行方を占ううえで重要なポイントと言えます。
経営トップが医師ではなく経営者としての仕事に専念しているか、経営企画室といった経営を専門とする部署があるかは1つの目安になります。経営企画室などは玉石混淆ではありますが、少なくとも経営を担当する部門がないと経営者の独断で職員の給与が決まったり、親族のMS法人に資金が流れたりといったコンプライアンスの欠如が招く弊害を防ぐことができません。
また、事業の継続性を担保していくためには、地域および社会のニーズや近隣医療機関の動向を踏まえた機能の整備や、医療職、患者、地域住民が集まる病院づくりを進めなければなりません。そのため、中長期的な視点による経営判断が必須です。実際に内部調査をしないと詳細な状況はわかりませんが、過去に診療報酬上の問題を起こしたなど、コンプライアンスに関する問題についてはある程度確認できます。倒産する病院を把握するうえで、3つの現象と併せて検討して見ることをお勧めします。
代表取締役 太田憲宏
(注)「ヘルスケア&ファイナンス 金融人のための医療・介護読本」(2015年11月号:株式会社日本医療企画発行)に、上記コラムと同様の記事が掲載されました。 |
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