No.2
地方都市における戦略的病院再編計画の課題
地域医療ビジョンの策定に向けて、平成27年度事業として行われた「未来へつなぐ安心医療提供体制調査事業(病院経営計画策定支援事業)」に参加された医療機関からの依頼を受けて、病院経営計画策定支援を実施しました。
当該医療機関の所在する地方都市の現状と課題を把握するため、公表データの分析や関係機関へのアンケート調査及びヒヤリング等のフィールド調査を行った結果、医療提供体制においては、2025年の医療需要に対し、一般病床が過剰(379床)で回復期が不足(197床)となっており、全体として182床が過剰になるだろうということが確認できました。
特に、現状においても隣接する病院間での棲み分けが進んでおらず、病床や人材、医療機器といった医療資源が有効に活用されていないという実態も明らかになりました。
更には、近年、当該エリアの病院は総じて、病床稼働率の低下や設備投資に伴う減価償却費の増加、借入金の返済等により億単位の赤字が発生しており、これが事業の継続性に少なからず影響するのではないかと危惧されるところであります。
現在、全国の都道府県において、地域医療構想の策定が進められており、2025年に向けた地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題となっています。当該地方都市においても、持続可能な医療・介護システムの構築には、現行システムの見直しによる効率性の追求と再投資のための利益構造へのシフトが重要であり、更なる機能分化と連携についての関係者間での議論が待たれるところであります。
地域医療構想の策定プロセスにおいては、各医療機関が当該エリアにおける自院のポジショニングをエビデンスデータから確認し、やりたい医療ではなく地域に求められる役割が何かを認識することから始める 必要があります。
従って、本事業をきっかけに各医療機関は、その役割を再認識して頂くとともに、安全で安心な医療を提供するシステムづくりに貢献するためにも、行政、大学等関係機関への積極的な働きかけと同時に法人本部への理解と協力を要請すべきであると考えます。
今回、報告書を作成するにあたり、一般に公開されている限られたデータを活用して、二次医療圏単位ではなく市単位の医療需要予測や、病床機能ごとの患者数予測等を弊社にて推計し作成した資料を基に、当該医療機関における経営戦略を提案しました。
行政及び関係機関が保有するデータを有効に活用することができれば、エビデンスに基づいたさらに精度の高いシミュレーションが可能となり、よりきめ細かい現実的な提案ができると考えております。
今後、医療・ヘルスケア分野におけるデータ提供が促進されることを願います。
代表取締役 太田憲宏
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