ヘルスケアデザイン株式会社

 コラム

No.6
患者に「医療の質」を見抜かれる時代


2025年までに、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になり医療・介護等に必要な社会保障費が急増することが懸念されています。2018年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われ、今後の医療・介護施策において極めて大きな節目となる年になります。
診療報酬改定に向けたスケジュールにおいて、中医協(中央社会保険医療協議会)での検討は第2ラウンドに入り、各検討項目の具体的な方向性についての議論が始まっています。
議論の一つとして、外来の機能分化・連携を目的とした「かかりつけ医」の普及があげられます。クリニックの医師は、患者の身体状態に応じて、病院の専門医療による治療が必要と判断した場合には、紹介状(診療情報提供書)を発行し、紹介した地域の病院への受診を勧めることになります。
一般的には、「医師による紹介」は、患者に適切な治療を受けるチャンスが与えられることになり、患者も医師を信頼してその医療機関を受診することとなります。クリニックから病院への患者紹介・病院からクリニックへの患者紹介を通じた医療連携は、診療報酬において加点評価されるため、双方で推進されます。
コラムしかし、実際には、医師は地域内で連携している病院を事務的に紹介しているケースも多く、各診療分野で評価の高い「技術のすぐれた医師」を紹介しているわけでは必ずしもない可能性があります。「受診歴がある」「自宅や職場・学校に近い」「交通機関の便がよい」「特に理由はない」など、利便性を重視し、医療の質はこだわらずに病院を選択した場合、満足のいく医療は得られにくいと思われます。
地域には多くの病院が存在し、患者は自由に病院を選択することが出来ますが、病院が提供する「医療の質」は様々です。毎年、公開データを基に全国の名医ランキング本等が出版され、ベストセラーになっています。医師のスキルに関する情報は、インターネットや書籍・口コミ等を通じて、患者が容易に取得できる時代になっています。がんや心臓病等の重篤な病気の患者・患者家族ほど、質の高い医療を求めて、医師や病院に関する情報を多く入手しようと思い、積極的に行動することが多いと思われます。
その一方で、「医療の質」に対し関心が低い患者・患者家族もいます。様々な「医療の質」の中から、どの質を選択するかの判断は、患者・患者家族に任されています。「医療の質」を見極め、自ら選択する覚悟を持つ患者だけが、質の高い医療を受けることができるといえるといえます。
一つの指標として、日本医療機能評価機構が行っている「病院機能評価」があります。病院を対象に、組織全体の運営管理および提供される医療について、中立的、科学的・専門的な見地から評価を行うツールで、病院機能評価を通じて、病院の質改善活動を行っています。
詳細の評価を分析することは患者目線では困難ですが、少なくとも受審しているかどうかは機構のホームページで確認することができます。

DPC分析や臨床評価指標など病院を評価するツールはどんどん増えており、今後はAI機能を用いた最適な病院選びを行う時代になるのではないかと思われます。しかしながら医療の基本は医師とのコミュニケーションであり、安心して医療を受けられる体制であると考えます。医療機関は医師の接遇、医療安全の体制を今一度見直し、患者との信頼関係を構築することが生き残る道だと考えます。

シニアコンサルタント 西尾 雅夫

 

 


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