No.7
急性期病院で生き残るために
全都道府県で地域医療構想の作成が完了し、2025年における病床の必要量は、全国ベースで高度急性期が約13万床、急性期が約40万床、回復期が約37万5千床、慢性期が約28万5千床、合計約120万床となっています。
2016年の病床機能報告では、高度急性期が約17万床、急性期が約58万床、回復期が約13万床、慢性期が約35万5千床となっています。両者の性格は異なり、単純比較することはできませんが、「急性期から回復期への機能転換が必要」な状況は明らかと考えられます。
地方都市における急性期病院の病院幹部の方々とお話をすると、自院が属する医療圏において急性期病床が過剰であることは理解されていますが、自院が急性期の看板を下ろすことについては抵抗があるようです。
実際、急性期病床における病床稼働率は2012年以降全国的に低下しており、特に7対1入院基本料においては、2014年に全国平均で80%を下回り、それ以降も下降傾向にあります。
7対1病棟の稼働率低下に最も影響を与えていると考えられているのが、「重症度、医療・看護必要度」基準の厳格化であります。同基準をクリアするためには、急性期を脱した患者の早期退院が必要になりますが、それを補うだけの新規患者数を確保できなければ、病床稼働率はどんどん落ち込むことになります。
一昔前の病院経営は、病床稼働率が落ち込むと急性期病床でありながら数日間退院日を遅らせ、病床稼働率を向上させてきました。また、入院基準を緩め、軽症の患者を積極的に入院させて患者数を確保してきました。
現行において、上記対応を行うと重症度、医療・看護必要度が保てない上、DPCにおける機能評価係数にも影響を与え、入院診療単価が大幅に下がってしまう結果を招くこととなります。
つまり、急性期病院として生き残るためには、平均在院日数を短縮し、かつ新規入院患者数を確保し続ける必要があります。 
平均在院日数を短縮するためには、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟への早期転棟、クリティカルパスの見直し、DPC分析によるベンチマークなどの取り組みが必要となりますが、多くの病院が取り組んだ結果、平均在院日数は全国的に短縮傾向にあります。
しかしながら、新規患者の確保は一筋縄ではいきません。同じ新入院患者数で平均在院日数を短縮し続けると、病床稼働率はどんどん悪化します。新入院の増やすためには、入院確率が高い救急搬送の受け入れを強化することと開業医からの患者紹介の促進に尽力する必要があります。
救急車の来院患者は入院する確率が高く、重症である可能性も高いことから、救急を断らないことが最も重要であると考えます。自院の入院患者で入院ソース(入院になった入口)を明らかにし、分析することが重要です。まずは救急搬送件数を月別年別診療科別に整理した上で、救急応需率の推移をグラフ化し、1件1件の「救急車お断り事例」を検証する仕組みが必須であります。
他の医療機関の紹介を増やす取り組みも基本的には同じで「断らない」ことが重要です。自院の強みを明確にし、得意とする疾患や症例、手術についてしっかりとアピールする必要があります。力の入れている病院は、病院幹部や担当医師を巻き込んで営業活動を専門に行う部隊を編成し、広報活動を行なっています。また闇雲に医療機関へ訪問するのではなく、医療機関別紹介患者数をデータ化し、特にミディアムユーザー(月によって紹介患者数が変動する医療機関)に対して、アプローチすることが重要です。
今後、急性期病院として生き残るためには「覚悟」が必要だと考えています。データから状況を読み、病院の進むべき方向を見失わないようにしなければなりません。
松室 誠
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