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医療機関における経営基盤の安定化 ~経費削減方策~
近年、医療機関の廃業が増加傾向にあります。帝国データバンクの2014年の調査によると、2011年度以降、休廃業する病院などの医療機関が急増しているとの統計結果があります。その背景には、都市部における競争の激化や、後継者不足による廃業などがあり、いずれにしてもこれまでのような経営手法では、病院の経営を安定させることは難しくなっております。
医療機関は継続することにより、地域医療へ貢献することが使命であり、事業を継続するためには建物や医療機器等への設備投資が必要となります。
つまり医療機関であっても、営利目的の株式会社と同じような目線で経営改善に取り組んでいかなければならないこととなります。
今回は、弊社が提案した経費削減における具体的な事例をご紹介します。
委託業務の徹底した見直し
公的病院において、徹底した業務委託の見直しを支援した結果、サービスを低下させることなく経費削減に成功した事例を紹介します。主なポイントは以下の通りです。
1:委託業務の人員配置の見直し
医事委託業務において、まず委託職員の配置人員全員のタイムスケジュール及び業務量を徹底的に調査しました。外来患者数が落ち着く午後などの配置人員を削減し、他部署へ配置することで、委託人員を減らすことができ、委託費を大幅に削減することができました。
2:仕様内容の見直し = 過剰サービスの是正
清掃業務の委託にかかる仕様書について、休憩室や管理棟など患者があまり利用しない箇所については、清掃範囲から削除、もしくは頻度を少なくするなど内容を大幅に見直しました。職員に対し、「自分たちの職場は自分たちがきれいにする」という意識を持ってもらうことが重要です。
3:契約方法の改善
病院の警備、駐車場の管理、清掃業務、洗濯業務など、病院が外部に委託しているさまざまな業務について、複数の業者に分割して発注するのをやめ、まとめて統合して発注することを提案いたしました。
また、寝具賃貸借において固定組数による請求を改め、入院患者数の実績に応じて毎月請求する契約方式に変更することを提案しました。
4:入札スケジュールの作成、進捗管理
公的病院は支出の根拠となる契約において、入札のプロセスが必要となります。
年度末にまとめて入札事務を行っている医療機関がありますが、委託契約の場合、人員確保の観点から次年度の契約は最低でも3ヶ月以上前に決定しておかないと、現行業者からの変更は厳しくなります。その期間が短くなればなるほど現行業者に足下を見られ、値上げ要求をのまざるを得ない状況が生まれます。
そういった状況を防ぐために、契約事務を担当者任せにするのではなく、役職者がスケジュールを作成し、進捗を管理することが必要です。
これらの徹底した見直しによって、大幅な経費削減を実現しました。
まとめ
病院などの医療機関の経費削減は、医療サービスの質に直接影響を及ぼす恐れがあるため、その他の業種よりもより慎重に検討する必要があります。
しかしながら、職員1人1人が「1円の費用削減=1円の収益増」の意識を持つことで、自ずと削減できる部分が明確になってきます。
シニアコンサルタント 西尾雅夫
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